第6話

 待ち合わせからセックスに至るまで、単純でスムーズな流れだった。
 おれたちのような人間は相手のことを深く知ろうとしない。目的は行為であって、交流ではないからだ。余計なことは聞かないし、言わない。
 今夜の相手はなかなか良かった。前戯が丁寧で持続力もあった。
 東京から出向で広島の福山に出てきているという。年はおれの5歳上。社会人。既婚者で子どもがいるが、東京に置いてきている。知り得たのは以上だ。きいたわけでもないのに、男が自分から話した。おれはふうん、そうなんだ、へえ、と聞き流した。
「特殊なスポーツでもしてる?下半身はずいぶんがっちりしてるのに、上半身だけやや細い」
 男の手はとても上手におれを触った。猫になった気分だ。うつ伏せで寝たまま、目だけを細めて男に向けた。
「スポーツバイクを少々」
 男は嬉しそうな顔をした。薄情そうな顔をしているのに、ちらりと見えた八重歯が意外だった。
「なるほど、それで。おれもバイクのメーカーに勤めてる」
 彼が見せてきたスマホの画像にぎょっとした。白を基調にした、細くなだらかな曲線を描いたフレーム。選ばれたものだけが持てる、洗練されたロードバイク。
「ルアフかよ……」
 よく知ってるね、と男が笑った。今日ほど自分が無名な自転車乗りだったことに感謝したことはない。この男が、おれを知らなくて本当に良かった。
 身体を起こす。シャワーを浴びてくる、と言い残してベッドから降りる。男はまだ話し足りないのか、シャワールームの前までついてきた。
「最近すごく忙しくなったんだ。信じられないぐらいロードバイクが売れる」
 理由は分かってる。北岳斗だろ。でもおれは何も言わなかった。気分よく今日という日を終えたかった。
「ブームだもんな。夏休みなんかは、しまなみ海道もサイクリストでいっぱいだ」
 シャワーを終え、乱暴に髪をぬぐっていると、男がドライヤーでおれの髪を乾かそうとしてきたので丁重にお断りした。
「そういうのいいよ」
「そう?……君って尽くしたくなる魅力があるな」
 同じ言葉を言われた記憶が頭をよぎった。それは恋人ではなかったが、そのとき言った男はうんざりと、面倒そうな顔をしていた。一方的に好意を持っていたおれは、それが嫌味だと分かっていても有頂天になった。
「よく言われる」
 ホテルを出る直前、また連絡してもいい?と男に問われた。おれは曖昧な返事をして、周囲を伺ってからするりと闇に溶けた。
 帰途につく前、コンビニに寄ってビールを買い、店先で一気飲みした。それからアプリを削除して、アカウントを作り直した。

***

 帰宅する途中、一番はじめに「尽くしたくなる魅力がある」といってくれた相手を思いだした。
 セルジュ・スヴェルチェフスキーはポーランド出身だと一度だけおれに自己紹介をした。元ロードレーサーだということ以外は、自分のことを語らない男だった。ときおり家族の話になると、プラチナブロンドの隙間で灰色の眼が悲しそうに光を失った。まずしい家だった、と彼は言った。東欧の労働者階級なんてみんな、あんなもんだけどな、と。
「色々なものをあきらめてきたが、蜜だけは無理だった。彼女はおれの光だ」
 そう言って、実家の商売を手伝うために仕事をやめて日本に帰ってしまった姉を、はるばる欧州から追いかけてきたのだ。
 姉の蜜は外交官をしていた。はじめの赴任先がポーランドで、そこで知り合ったのがセルジュだった。そのころ彼は、自転車の世界では頂点に位置するUCIワールドランキング1位のチームにいた。エースが一番信頼しているアシストとして活躍し、どの勝利にも必ずセルジュの貢献と献身があった。
 エースはかつて「帝王」と呼ばれ、ランスやパンターニに並び称されるほどの人物だった。セルジュは彼のためなら自転車どころか、命さえささげてもいいと思っていたらしい。実際に、エースを守るために落車に巻き込まれたこともあったし、厳しいマークに遭う彼を発射するために強引にプロトンに穴をあけて、ケガをしたこともあった。それでもよかった、と彼は言った――それも当時の、雑誌のインタビューを勝手に読んだだけなので、本人から聞いたわけではないのだが。
「彼の勝利は私達チーム全員の勝利であり、喜びです。そのためなら何をささげるのも厭いません」
 自転車競技はとても過酷で、不思議な競技だ。チーム競技なのに、リザルトに残るのは勝者ひとりの名前のみ。エースの勝利の影でアシストが何人倒れても、名前が残るのはエースただ一人。
 たった一度の勝利の影に、幾人ものアシストたちの貢献や犠牲がある。彼らはそれを犠牲とは思っていないかもしれない。でも「犠牲」という言葉は間違いじゃない。風よけになり、雨よけになり、ペーサーになり……足をささげ、ささげるものがなくなれば己のバイクすら差し出す。己の記録は度外視し、ひたすらにエースのために尽くす。それを己の幸福として、誇りをもって生きてきた。セルジュはそういう人間だった。
 だから彼の愛するエースがドーピング疑惑を持たれ、それが事実だと判明してすべての輝かしい記録をはく奪された上で追放されてしまったとき、セルジュは何もかもを失ってしまったと感じた。
 自暴自棄になり、それまで全く近寄らないようにしていた薬物に手を出そうとしたとき、止めてくれたのが姉の蜜だったという。彼らが話したのはその日が初めてだった。暗い路地裏で、売人と交渉しようとしていたセルジュに声をかけた姉は、静かにこう言ったという。

「あなたまで誇りを失わないで」

****

 玄関の引き戸をあけると、腕を組んだ姉が玄関で待ち受けていた。
「北くんが来て、さっきまで待ってた。家で待ちなっていったけど、ずっと外で待ってたんだよ。雨降ってるのに」
 おれの朝帰りはめずらしいことじゃない。北はどうだかしらないが、少なくとも姉は慣れている。朝食は別々にとっているし、特に迷惑はかけていないはずだ。
「あいつは別に恋人でも友人でもないから、待たれる理由がないんだけど」
「人間づきあいがまともにできない、孤独でケガに弱った男に、気まぐれで構ったのはアンタでしょ。一度構ったなら最後まで責任取りなさいよ」
 北の人間評が的確で笑いそうになったが、ここで笑ったら大変なことになる。おれはぐっと腹に力を入れて神妙な顔をした。
「北くんは未熟なところがある。でも真っすぐな子だよ、あんたと違ってね」
「だからおれなんかに引っかかってしまったんだな。かわいそうに」
 振り上げられた手のひらをじっと見る。殴られる未来は想像できたのに、避ける気持ちは全く沸いてこなかった。
 視線を落として痛みと衝撃を待っていたが、いつまで経ってもそれが訪れない。顔をあげると、北が姉の手首を握って止めていた。
「未熟なおれでも暴力が良くないことは分かる。やめましょう、あなたの手も痛くなる」
 こんな荒れた雰囲気の中、北の声はいつもの、低くて落ち着いた、晴れた日の湖面のような調子だった。姉はその手を振り払おうとして、びくともしないことに気づいてため息をつく。
「その通りだね。わかったから離して」
 北が手を離すと、姉は自分の手首をさすりながら家の奥へ消えた。おれはぼうっと後ろ姿を見送ってから、北を見た。どんな顔をしているのだろう、助けてやった感を出しているのか、それとも、待っていたのに帰ってこなかったことについて怒った顔をしているのか。いくつか想像したが、どれも違っていた。
 北は、とても悲しそうな顔をしていた。表情に乏しいから、おれや他の人間がするような「悲しい顔」ではなかったが、伝わってきた。
「お姉さんに一体何をしたんだ」
 ひやりとした。北は未熟なところがあるが、核心を見抜く鋭さを持っている。それがなければ、自転車競技であそこまで上り詰めることはできない。
 いくつかの嘘が頭に浮かんだけれど、放棄した。さすがにそこまで不誠実なことはできないと思った。
「……ひどく傷つけたことがあるんだ。だから、当然だよ。仕事させてもらってるだけで感謝しないといけない」
 飯食ったか、と問いかけると、北は視線を下げたまま首を振った。来いよ、と離れに案内すると、おとなしく後ろをついてきた。
 雨は止んでいたが、芝生はしっとりと湿っていた。

 夕べ寝てなくてさ、簡単なのでいい?とため息まじりに伝えると、北は「おれが作るから座ってろ」と尊大な口ぶりで言った。お前が?と口から出そうになったが、作ってもらえるのならありがたい。今本当にくたびれていて、すぐにでも寝たいぐらいなのだ。多分姉に殴られたら死んでいた。体力ゲージが1しかない状態だったし。
「じゃあ、庭の野菜勝手に使ってくれていいよ、あと冷蔵庫の中もご自由にどうぞ」
 北は黙って庭に出た。その後ろ姿を見ながら、サイクルジャージを着ていないこいつを見るのは初めてだな、とどうでもいいことに気づいた。自転車の訓練やリハビリの後におれの家に寄ることが多いから、北はいつ見ても自転車のウェアを着ていた。それが今日は、白いTシャツにカーキのカーゴパンツ姿で、足下は黒のコンバースだったし、髪も後ろになでつけず無造作に下ろされている。こうして見ると、年相応の若者だった。……目つき以外は。
 どことなく不安で、窓からずっと北を見ていた。本当は疲れていたので横になりたかったが、眠ってしまいそうだったのでちょうど良かったかもしれない。湯を沸かしてコーヒーを淹れ、熱すぎるそれを冷ましながらちびちびと飲んだ。
 北の収穫作業は、想像していたよりもずっと早くて丁寧だった。それに、収穫に適した野菜を選ぶのも上手かった。黙々とトマトやなす、ネギをとり、土を落としてから一度こちらに持ってきて、そのまま森の中へ入っていった。いやいや、待て待て。お前まさか、うさぎか鹿でも狩ってくるつもりなのか?さすがにそれは、いつ食えるんだって話だよ。
 腰を浮かしかけたところで、すぐに北は戻ってきた。Tシャツをかごがわりに持ってきたのは、いくつかのきのこと一輪のコスモスだった。そういえば、前も花を持ってきたな。猛毒の花だったけど。
 丸椅子に腰掛けて、調理している北を眺めた。北はガラスの小さなコップにコスモスを生けて、水場の前に置いた。そこは確かに窓があって、朝の光が目一杯降り注いで気持ちがよさそうな場所だった。
「花が好きなのか?」
 北は怪訝な顔で振り返った。なんだその顔。
「いや、前も持ってきたろ。だから好きなのかな、と」
「別に好きじゃない」
「じゃあ、おれが好きだから持ってきたのか。昔から愛の告白には花がつきものだもんな」
 冗談のつもりでハハ、と笑ったが、北は笑わなかった。
「違うと思う」
 椅子からずり落ちそうになった。
 違うのかよ。別におれのことは好きじゃないと?じゃあ一体、お前は何をしにここへ来てるんだよ、と叫びそうになって、なんとか堪えた。なぜおれがいきり立たなくてならないのか。好かれたって困るだけだろうが。好きじゃないならそれでいいんだよ。
「なんでもいいから花を飾れば、貧しい心に余裕が生まれる、と、いつも祖母が言っていたから」
 習慣みたいなものなんだ、と北は言った。おれは何故か、もやもやとした気持ちでふうん、と返事をした。
「おれの心が貧しいと?」
 できたぞ、と声をけられ、テーブルの前に座った。きのこの入ったスープ、なすの揚げ浸し、トマトときゅうり、それに冷蔵庫にあったハムを使ったぶっかけそうめん。全部とても美味そうだった。
「いただきます」
 腹が立っていても飯は食う。生きるというのはそういうことだ。おれはとりあえず今の話題を棚上げして、目の前の食事に集中した。北も黙って食べていた。
 窓から風が入ってきて、窓辺に飾られたコスモスを揺らした。
「……貧しいのはおれの心だったと思う、そのときは」
 北は、食事を終えてからそうつぶやいた。
「でも汀も、同じように見える。貧しいというよりも、そうだな……荒廃している」
 反論できなかった。事実だと思った。
「まあそうだな。おれには夢なんてもものはないし、誰とでも寝るし、唯一生き残った家族の姉にも憎まれているし。心も荒廃するってもんだよ」
 軽い調子で言ったのだが、北は首を振った。
「お前が好きじゃないと思っているお前自身を、誰も大事にしない。誰も本気で好きにならない。自分を粗末に扱えば、その倍以上、他人に軽んじられる」
 一瞬で血が沸騰した。立ち上がった勢いで椅子が後ろに倒れてけたたましい音を立てたほどに。
「おれに同情して導こうとでもしてんの?教祖気取りか、ふざけんな」
 愛されるのはいい。求められるのも。
 だが同情されるのだけはごめんだ。それだけは絶対に受け入れられない。
「お前に何がわかんだよ。必死で求めたこともないくせに。運良く持って生まれただけだろうが。いつも不幸そうなしけたツラしてるけど、自分がどんだけ恵まれてるか気づいてねえだけだろ。何が不幸な生い立ちだよ。そんなもんはな、今認められて、幸福に生きてりゃチャラになんだよ。いつまでたっても不幸です、ってなツラして偉そうに他人に講釈たれてんじゃねえよ」
 これ以上はまずい、ただの八つ当たりで、嫉妬だ、醜い。分かっているのに止まらなかった。
「出て行け。二度と来るな。お前の顔は見たくない」
 北は少しも傷ついた顔をしなかった。ただ苛立ち、侮蔑するような顔で席を立った。
「言われなくても、もう来ない」
 ゆっくりとした動作で、北は家から出て行った。全く動揺したそぶりもなく。
 その後ろ姿が消えてから、思い切りテーブルを蹴った。上にのったままの食器が耳障りな音をたてる。その後は、何もかも放棄してベッドに横たわった。早く眠気が訪れてほしかった。

 少しだけ眠ったけれど、結局深い眠りは訪れなかった。
 何度寝返りを打ってもダメで、暗いことをねちねちと考えている自分が嫌になって、立ち上がってテレビをつけた。これがまた目も当てられない大失敗だった。画面では、「日本人初のツールステージ優勝者、天才ロードレーサー北岳斗」という特集番組が再放送されていた。画面の中の北は、エースを超級の山の中40キロ曳いたあとで、脱落した彼の代わりに走り切った。狂気じみた走りで、狼の眼が爛々と光っていた。その眼は一度も後ろを振り返らずにただ山の上を目指していた。野生動物が頂きへ、頂きへと本能で向かうみたいに。
 プロトンからの刺客、エースたちのアタックをことごとく振り切り、誰も寄せ付けない強さで山岳ステージを制した北は、おれが見たことのない、とても晴れやかな笑みを浮かべていた。
 画面が切り替わって、明るいスタジオが写り込む。めずらしくジャケットを着ている北と、アナウンサー、それにロードレースの解説で有名な元サイクリストが並んでいて、元サイクリストの「何度みても素晴らしいレースです」という感動を堪えたような、熱い言葉を合図にインタビューが始まった。
 生放送ではないから、おそらくツールが終わってすぐに録画した番組だろう。まだ見たことのない動画だったので、暗い気持ちのまま身体を起こして画面に見入った。北は白いシャツにグレーのリネンジャケットを羽織っていた。まだケガをする前だったようで、襟ぐりから見えている鎖骨にもいまのような傷跡は見当たらない。
「北選手は、自転車競技を始められたのが遅かったそうですね。数ある競技の中で、なぜ自転車、それもロードレースだったのか、お伺いしてもよろしいでしょうか」
 アナウンサーは、爽やかな短髪の女性だった。彼女は凛としたよく通る声でそう問いかけ、北を見つめた。北は少し考えるような顔をしてから、低い声で言った。
「たまたま、近くにあったのが自転車だったんです。両親が厳しくて、許可されるスポーツは限られていました。自転車ならばそう危険もないだろうということで、特に禁止されなかったので始めました」
 元サイクリストが「え」と驚きの声を上げる。おれも同じ気持ちだった。驚きだけではなく、聞き間違えではないかと自分の耳を疑った。
「それじゃ、もし近くにあったのが自転車ではなくバスケットボールで、ご両親が禁止しなければ、バスケットボール選手になっていたかもしれない、ということですか」
 北の容姿が整っているためなのか、それともこの返答が面白かったのか、アナウンサーは少し目元を緩めてさらに問いかけた。
 心臓がぎゅっと締め付けられた。一体、北は何と応えるのだろう。
 おれの心配をよそに、北はゆっくりと首を振ってから言った。
「詳しいことは言えませんが、当時色々と行動を制限されていた私にとって、自由を得るためには自転車しかありませんでした。――バスケットボールでは遠くまで移動できませんしね」
 ニコリともせずに繰り出された冗談だったが、アナウンサーと元サイクリストは少し笑った。
「厳しいご両親だったのですね」
「厳しいというか……、まあ、そうですね」
 歯切れのわるい答えだったが、無理もない。まさか「カルト教団にハマっていた両親と一緒に、自然崇拝コミューンの中でサバイバル生活をしていました」なんて説明できない。
 おれの知っている北よりもずっと落ち着いた、しっかりとした返答がいくつかなされ、インタビューは終盤を迎えた。
 最後に、と女性アナウンサーが真剣な顔で問いかける。
「北選手にとって、自転車競技とは何ですか」
 場がしんと静まり返る。張り詰めた空気だ、と画面越しにも感じた。おそらく、番組上一番大切な部分なんだろう。
 北はほんの一瞬だけ視線を落とし、堂々とした、いつもの不遜な様子でアナウンサーを見つめて言った。

「自由を得るためのツールです」

 自転車に乗っているとき、自由になれるんです。自転車は、これといったエネルギーもいらず、好きな速度で、好きな場所まで行くことができます。風や木や土、天気の匂いを肌で感じながら、自分の身体だけを使って遠くまで行けるのです。
 これは自転車に乗ったことがある人しか分からないと思うんですが、車やケーブルカーで山頂まで登ったときの風景と、自分で漕いで、自転車で山頂まで登ったときの風景は、全然違うんです。ああ、おれは自分の力で自然に勝ったんだ――と思えます。私にとって自然は、子どものころから大変に手ごわい敵でしたので、そのよろこびは何にも勝ります。

 テレビを観られたのはそこまでだった。
 乱暴にリモコンを掴んで画面を消してから、ああ、と声を出してベッドに寝転がった。
 妬ましくて妬ましくて、いっそ憎しみに近い感情を抱いている相手が、自分に懸想している。そのことに昏い満足感を得ていたのが、心底ばかばかしくなった。
 北はおれのことが好きなわけでもなんでもなかった。ただ同情していただけだ。哀れんでいた。ついでに言えば、ただでやれるからかまっていただけかもしれない。
 その上、おれはこいつに絶対に勝てない。
 自転車が好きな理由は全く同じなのに。
 持って生まれた才能が違いすぎる。分かっていたはずの事実があまりにも辛くて、声も出さずに泣いた。