6:甘い首筋

 くるまったシーツの隙間から、たばこをすっている千葉を盗み見た。頭はボサボサで、うっすらと髭が生えている。
 ひどい顔だった。
 強盗にあった人間だってここまでひどい顔はしない、ってぐらいに、憔悴し、自己嫌悪し、なぜか傷ついてさえいた。
 視線の先には、大きな窓があった。古いこの部屋は日当たりだけは最高で、大きな窓からはたっぷりと朝の光が差し込み、海と空が溶け合う絶景を眺めることができる。地獄の底から這い上がってきたみたいな顔で、千葉は窓の外を眺めていた。そこに何か、前向きな答えがあることを期待しているかのように。
 殴られた頬が痛かったが、他にもっと痛いところがありすぎて、指一本動かせなかった。股関節は長い時間不自然に開きすぎていて軋むようだし、髪を掴んで後ろに引かれたときに首も少し痛めていた。縛られた手首は赤くこすれた後が当分消えなさそうな上、あちこち噛まれて痣だらけだ。なにより、容赦なくつっこまれ続けまるで千葉専用便器になったみたいな尻ときたら、もう最悪だった。多分切れているし、血も出たと思う。こんなことで病院に行くぐらいなら、オナニーのしすぎで心筋梗塞起こして死んだほうがまだマシなので、医師の友達から横流ししてもらった軟膏をひたすら塗るしかない。
 まぶしい太陽の光に目を細め、灰をおとすこともせず、千葉はたばこをくわえたまま外を眺めている。やがて無言で服を着替え、寝たフリをしているおれの髪にキスをし、「ごめん」と絞り出すように呟いて出ていった。
 それから気を失うみたいな唐突な眠気が降りてくるまでの短い時間、おれは二度と手に入らないものを惜しむみたいに、空と海ばかりを見ていた。

 痛みと熱でうつらうつらしながら、夢をみていた。
 確か、一回目の。

「なあ、名前。なんて読むの、これ」
「むらやま かずほ」
 海上保安大学校は全寮制だ。ただし、警察学校のような監獄じみたところではなく、毎日夜は自由時間があるし、休前日は外泊もできた。
 広島県呉市にある、国交省所管、海上保安大学校に無事入学して、一番はじめに話をしたのが千葉創佑だった。寮の部屋が隣同士で、厳しい訓練に音を上げる者も多い中、千葉だけはひとことも文句やグチを言わなかった。同じように、楽しさこそあれつらいと感じたことがなかったおれは、千葉とよく気があった。海で仕事を出来るなんて幸福の極みだよな、とお互いに二言目には言い合っていたことを未だによく覚えている。
「女みたいな名前だな」
 子供の頃から言われ慣れた言葉だったが、全く腹が立たないというわけではなかったので、おれは眉を寄せて肘でこづいた。
「うるせえ、気にしてんだよ」
「でも音感がいいよな。カズホ」
「どうせなら、帆船の帆を使って欲しかったけどな」
 本科一学年目は座学を中心として、訓練科目の入り口を学ぶ。基礎教育科目(一般的な学科全般や憲法や法学、英語は必修。あとは選択科目としてロシア語・韓国語・中国語・柔道・剣道から一科目)、専門基礎科目(国際政治、気象学、海洋学)、訓練科目(逮捕術、拳銃や武器、潜水)と実習科目(小型船舶実習、通信実技)……など。二学年目の後期までは基礎分野を広く学び、後期にはいると「第1群(航海)」「第2群(機関)」「第3群(情報通信)」の三つからコースを選択し、専門性を高めていく。
 船に乗り、海に出ることしか考えていなかったおれは、はじめから「第1群」しか眼中になかった。目標は、一等航海士を取得し、潜水士として船に乗り、救助業務に従事すること。
「なあ、村山って中国語得意ってきいたけど、マジ?おれも勉強したくてさ、よかったら空いた時間でいいから、教えてくれないかな」
「いいぞ。そのかわり、数学教えろよ」
 海保大は、幹部候補生を育てるための学校なので、まわりは頭も運動神経もいい、エリート揃いだった。文系理系が混在していて、お互いによく助け合った。おれはというと、語学の面でよく頼りにされた。英語のみならず、アメリカで親友だった台湾人のシューから、日常会話程度の中国語を教えてもらったりしていたのだ。中国語は卒業後の警備業務でも重宝されて、本当にありがたかった。
 意外なことに、千葉は社交的なわりに友人が少なかった。思い返してみても、おれとあとふたりぐらいしか親しい友人は思い浮かばない。どちらかというと浅く広く交友関係を持つタイプだったおれからすると、明るくて頭のいい千葉が友人作りに積極的でないことが意外だった。誰に対しても平等に如才なく接するけれど、これ以上は立ち入ってくれるな、という線が、おれや他の人間よりもくっきりとしているような感じだった。
 頼まれた中国語を教えているとき、千葉の真剣な顔を何度も盗み見たものだ。考えているふりをして、シャープペンシルを黙々と動かしている千葉の、肩のラインや、真剣なまなざしを、苦しくなるぐらいみつめていた。地味だが男っぽくて、視線が強くて、名前を初めて呼ばれた瞬間から心惹かれていた。といっても、親しくなって半年で失恋していたが。千葉には、高校からつきあっている、結婚を約束したかわいい彼女がいたのだ。おれの入り込む余地なんてまったく無かったし、友人以上を求める気持ちは強く封じ込めていた。
「なあ一保、今度の土日、どっか遊びにいかねえ?」
「おい……前の週もおれと遊んでただろ。彼女と遊べよ。もしくはおれ以外の友達も作れっての」
「んー、そうなんだけどな。最近、ちょっとウザくなってきたんだよな。おれさ、潜水士になりたいから卒業後も研修生としてここ通いたいんだよ。でも彼女は、一緒に住みたいからヤダとか言ってくんの。バカかよ。将来がかかってんのに、そんな色恋沙汰のためになんで進路ねじ曲げねえといけねんだよ」
 最近彼女との仲がうまくいっていない、と打ち明けられたのは、2学年の後期、お互いに迷い無く「第1群」を選択した直後のことだった。自習室で中国語を教えながら、おれは肘をついて呆れたような顔をつくり、千葉を窘めた。
「気持ちはわかるけどな。寂しいんだろ。いいじゃん、結婚の約束してんだろ?卒業したら籍だけいれて、週末だけ一緒に暮らせば」
 海保大は四学年になれば、外で部屋を借りることができる。といっても外泊ができるのは週末だけなので、同棲するとしても週末のみになるが。
 心の中の嵐を無視して、にこやかにアドバイスする。──千葉を好きになったときから、覚悟はできていた。想いが通じることがないならせめて親友として役に立ちたいとおもっていたし、正直、恋心を断ち切るためにはもう少し距離が必要だった。そのころのおれと千葉は、距離が近すぎた。飲み会や、興味のないコンパや自習など、ほとんどの週末を一緒に過ごしていた。うれしくもあったが、その分、自分がふたつに裂かれそうなぐらい苦しい瞬間も多々あったのだ。
「それでいいのか」
 低い声で、千葉がつぶやいた。
「ほとんどおまえとあえなくなるけど、いいのかよ」
 いいわけ無いだろ。そう叫びたかったが、できるわけがない。おれはいつもどおり親友の仮面をかぶって、物わかりのいい言葉を投げた。
「いいも何も、そういうもんだろ。彼女より友達優先してどうすんだよ」
 呆れたような声がうわずってしまった気がして、それきりおれは黙った。嘘はつきなれていたが、気持ちのいいものではない。
 沈黙が降りてきて、おれは手元のノートを眺めた。自分の汚い字と、目の前の千葉の、端整な字を見比べる。そこに置かれた、逞しい腕にはいくつかの古い傷跡があった。制服以外でも長袖しか着ない千葉の珍しい半そで姿に、自然と視線が引き寄せられて自己嫌悪した。
 どれぐらいそうしていたか、思い出せなくなったころに、千葉が言った。
「最近、彼女といるよりお前といるほうが楽しくなってきてさ」
 外まできこえるんじゃないかと思うぐらい、鼓動が高鳴ってしまった。動揺を隠すために、おれはテーブルの上に置いてあった水を一口のみ、「で?」と肩をすくめる。
「一保。前からおもってたけどそのアメリカかぶれみたいなリアクションやめたほうがいいぞ」
「かぶれてねえし。住んでたんだから仕方ねえだろ。染みついてんだよ」
 はあ、とこれ見よがしな溜息をついたあと、千葉が低い、落ち着いた声で言った。
「お前は、顔はきれいだけどどこから見ても男だし、下手したらおれより強いし、細いのに食う量はおれ以上だし、口は悪いし、気は短いし、いびきうるせえし…」
「千葉ァ。陰口は影でいうから陰口っていうんだぞ?よし殴る」
 いいながら軽く頭を平手で叩いてやろうとしたが、すんなりと避けられた。
「人当りいいけどあんまり本音言わないし、おれに対してもどっか線引いてるし、たまに、仲良いと思ってんのはおれだけかなって不安になるけど」
「まだいうか」
──でも、一緒にいるとすごく楽しい。
 そう言って、千葉はまっすぐにおれを見た。そして、はにかむように笑った。
「お前が女なら良かったのに」
 全く他意のない言葉に、おれの心は深く傷ついた。キライだと言われるよりもはるかに深く、しっかりと。だから、傷を早く治すために、おれはますます心にフタをした。あけっぴろげに生きていたら、何気ないときに大怪我をしてしまう、そう、今のように。
「…くだらねえこと言ってねえで、さっさと課題やっちまえ」
 テーブルの下で足を蹴って、フン、と顔を逸らす。声が震えていないか心配だった。
「変なんだ」
 なにが、と問いかける暇はなかった。テーブルに投げ出していた左手を、千葉の右手がそっと覆っていた。平静を装って、その手を退けようとする。強く、手前に引かれた。
「お前を見てると、変になる」
 目の前に、千葉の顔があった。鼻先がぶつかりそうになった刹那、傾いた頭が、唇を重ねてきた。瞬間、周囲の音が何も聞こえなくなって、息が止まった。やわらかく、熱い唇は、触れただけですぐに離れていく。
「気持ち悪いだろ。ほんと、ありえねえよな。――でも、お前にさわりたくて死にそうになるんだ」
 離れていこうとした千葉の首に腕をまわし、抱き寄せ、おれからキスをした。そう、おれからだった。千葉は自制心を持って離れようとしたのだ。それなのにおれが、あいつを間違った道へ引きずり込んだ。
 荒々しく立ち上がった千葉がテーブルに身体を打ち付けて、うめき声を上げた。身体を離したのは一瞬で、回り込んですぐ側にきた千葉は、遠慮なくおれを抱きしめた。たくましくて熱くて、心が溶けてしまいそうだった。ためらいがちに舌が入ってきたとき、口を開いて応えたのもおれだった。密着している千葉の下半身が反応を示しているのに気付いて、興奮に頭がおかしくなりそうだった。
「触ってほしかったのは、おれだ」
「一保」
「ずっと千葉のことが好きだった」

 言わなければよかった。好きだなんて、言うべきじゃなかった。
 でもあのとき、もう自分の気持ちに嘘をつくことができなかった。

 

 

 

 携帯電話から聴き慣れた音がきこえる。
身体が熱い。はからなくても分かるぐらい、熱が出ていた。
オーナーに電話をして休ませてほしい、と伝えたところ、めったに休まないので逆に「明日も休め」とすすめられてしまった。確かに、おれは所定の休日以外何年も休んでいない。前の仕事のクセかもしれなかった。
なんとか連絡を終えて、1時間ほど眠っていただろうか。ベッドの中で、携帯電話がふたたび鳴った。千葉の名前が思い浮かんだが、その可能性は無かった。着信拒否をしているし、だいたいこの着信音はLINEだ。
いま、このIDを知っているのはひとりだけだった。星野成一。赤い傘の、犬のような目をした。
 寝返りをうつのも辛かったが、なんとか手を伸ばして携帯電話を覗き見た。成一のアイコンは、なぜか出来の悪い、黄色い折鶴の写真だった。しわくちゃで、頑張って贔屓目に見てようやく鶴、といった体のもの。けれどどうしてだろう、その写真をみていると心が和んだ。良く分からないけれど、とても心がこもった折鶴だという気がした。

『今日体調が悪くてお休みだってきいて。おれも休みだったので気になって連絡しました』
『もしかして、食あたりとかだったらどうしよう、と思って』
『大丈夫ですか?』

 そうか。確かに、あんな帰り方をしたあげく翌日仕事なんか休まれたら、気になって当然か。
 でも、もうストレートの男とは深く関わりたくなかった。興味のない相手ならともかく、成一はまずい。一緒にいると、絶対に好きになってしまいそうだった。――過去の恋愛をまだ引き摺っているのは、きっと何か事情があるに違いない。もう、可能性のない片思いや、お互いを苦しめるだけの恋愛は二度とごめんだ。
『ごめん、心配かけて。ちょっと風邪ひいたみたいなんだ。料理はどれも美味かったぜ、というかおれも一緒に作ったんだし、もし食あたりだとしてもおまえのせいじゃないから。礼が遅れて悪かったな、昨日はどうもありがとう』
 送信。
 たったこれだけのメッセージを送るだけなのに、ものすごい疲労感があった。自然と閉じてくる眼を閉じ、発熱で震えてきた身体をタオルケットの中に押し込んで、携帯電話をマットレスの上に手放す。
 聴き慣れた、デフォルトの着信音が流れ始めて、反射的にとってしまう。そうだった。いつも、休日の前になったら千葉から電話がかかってこないか、片時も携帯を手放さずに待っていたことを思い出す。自分からはかける勇気がなかった。一度、あいつの浮気相手が電話をとってから、恐ろしくてかけられなくなってしまったのだ。
『もしもし、ええと……星野です』
「知ってる。名前出るんだから」
 よほどひどい声だったのか、電話越しに成一が絶句したのが分かる。
『なにか必要なものはありますか?持っていきます』
「ないし、来なくていいから。うつったらどうすんだよ」
 風邪ではないので、うつる可能性はないのだが、便宜上嘘をついた。
『でも、かなりひどいでしょう?』
「大丈夫だから。……なあ」
『はい』
「おまえのアイコンのさ、鶴。あれって何?」
 話を逸らすために思いついた話題だった。成一が一瞬言葉につまってから、笑いを含んだ声で返事をした。
『あれは……。あの、一保さん。それ話しますから、家に行っていいですか』
 思わぬ取引だった。折鶴の謎。どうでもいいはずなのに、妙に気になってしまうのは、言い訳が欲しいからだろうか。成一が家に来てもいい、という言い訳が。もし誰かに「どうしてあの男を家に入れたんだ?」と尋ねられたら、おれは折鶴の話が聴きたかったんだ、とでもいうのだろうか。
――バカげている。
「…好きにしろ。でもお前、来たら引くと思うよ。もう二度とおれに会いたいと思わなくなるかも。でも謝らねえからな、一度は断ったんだから」
 自分の性癖をカミングアウトしているのだから、この状況をみればおそらく誰でも「レイプされた」という発想に思い至るだろう。おれは露悪趣味ではないので、できればその痕跡を消したかったけれど、電話をするだけで辛いというこの状況でそれは不可能だ。当然ながら深雪にもなっちゃんにも、もちろん両親にも頼ることは出来ない。
 もう何かを考える余裕がなくて、電話を切って目を閉じる。熱でぐるぐる回る天井が、上からどしんと落ちてきそうだ。自分の浅くてはやい息をBGMに、おれはいつの間にか眠り込んでいた。

 水音がする。波の音じゃない、何かを洗うような。
 洗剤の匂いがして、うっすらと目をあけた。キッチンの方から、いい匂いが漂ってくる。卵と出汁の香りだ。それと、ヤカンのお湯が沸いた音。
 背の高い後ろ姿がうっすら見える。頭や首に貼られているのはシップ型の冷却材で、汗が拭かれ、着替えまで済まされていた。済まされ…てるってことはみられたってことか。なるほど、死んでしまいたい気持ち再び、である。年下の、知り合って間もない青年に、とんでもない状況の自分を知られてしまったときは人間こんな気持ちになるんだな。とにかく消えることができるなら今すぐここから消えたい。この国というかもう、宇宙から消えたい。
「一保さん、食べられる?たまご粥作ったんですけど、薬飲むなら少しでも食べた方が」
 ベッドの側に椅子を持ってきて腰掛け、成一が上から覗き込んできた。窓の外へ視線を逸らすと、太陽が少し傾いていて、14時を過ぎたところだった。長い間眠っていたらしい。
「一保さん」
 名前を呼ばれ、勇気を出して成一をみた。日の光に照らされた明るい眼が、哀しげに細められている。そこに、同情や嫌悪は見当たらなかった。あのとき赤い傘を差し出してくれた眼と、何も変わらなかった。
 身体を起こそうとすると、成一が手をかしてくれた。背中にクッションを挟み込み、太ももの上に枕と雑誌を置いて、簡易テーブルを作り、そこに卵かゆをのせる。
「水は飲めそうですか?」
「…ありがとう」
 冷たい水を少し口に含んでから、木のスプーンで少しずつ粥をすくい、口に運ぶ。出汁がきいていて、とても美味しい。
 熱は下がっていたが、殴られたときに口の中が切れていて、少し染みた。顔をゆがめるおれをみて、成一が「おいしくなかった?一応味見はしたんだけど」と心配そうに首をかしげる。
「お…」
 おいしいよ、と言おうとして、唇がふるえた。ダメだ、絶対に泣きたくない、違うことを考えよう。そうやって意識を逸らそうとすればするほど、それはこみ上げてきて止まらなくなった。
 おかゆのなかに、自分の涙が落ちていく。次から次へと、あふれては落ち、拭っても拭っても出てきた。ごめん、と謝罪しようとした声は、嗚咽に変わってしまう。握りしめた拳を噛もうとしたとき、腕をそっと掴まれた。なぜか自分のほうが痛そうな顔で、成一は首を振った。
「ごめん、おれ多分……いまステップ4だわ、だから涙が」
 抑うつ状態。もう元には戻れないと分かって、落ち込んでいる状態だっけ。勝手に説明を始めた喉が笑い声を発しても、気持ちは晴れるどころかどん底へ落ちていく。
 自然と俯いてしまったせいで、成一が今どんな顔をしているのか分からなかった。怖くて見られなかったのもある。上手く動かなくなった口をなんとかしようと苦心していたら、影が差して顔を上げた。
「無理に説明しなくていいよ」
 背中に腕が周り、やさしく抱きしめられる。全く性的なものを感じさせないのに、思いやりと誠意のあふれた抱擁だった。こんな風に誰かに抱きしめられたのはいつぶりだろう、と考えると、ますます涙が出てきて止まらなくなり困った。
大きなてのひらが、なだめるように、背中を何度か撫でた。
頭をのせた成一の首筋からは、果物のような、すごくいい匂いがした。