0:わかっていたけど好きだった

 暴力が悪だ、ということは知っている。理解もしている。
 けれど、それだけで相手を嫌いになったり、憎んだりすることは出来ない。
 殴られたり、罵声を浴びせられたりすることが、哀しくないわけではなかった。辛くて、腹が立って、時には殴り返したり、大声で怒鳴り返したりもした。
 それでも、最後はいつも許してしまう。
 バカな考えだと、みんな笑うだろうけど。

 

 あいつはいつも殴りながら、罵倒しながら、「ゆるして」「愛して」って叫んでいるようにみえた。